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Miho Uchida

ヴァスコ・ヴァッシレフ氏にインタビュー


©Svetloslav Karadjov, Dizzart Studio

  オミクロン株の出現前に訪日し日本各地で数々のコンサートをこなした英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)のコンサートマスター、ヴァスコ・ヴァッシレフ氏。晩秋の東京でフジコ・ヘミング氏と一緒に出演したコンサートを二日間こなしている合間にインタビューの機会を得てお話を伺った。


ヴァスコ・ヴァッシレフ

(Vasko Vassilev)

プロフィール

ロイヤル・オペラ・ハウス・オーケストラ、コンサートマスター


ブルガリア出身。ヴァイオリン奏者および指揮者。7歳でソフィア・フィルハーモニー管弦楽団と共演、レコードをリリース。10歳でブルガリア政府からの小学生としてモスクワ音楽院付属中央音楽学校に留学。数々の国際コンクールで受賞後、1993年、23歳で史上最年少のロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)のコンサートマスターに就任。2005年、ロイヤル・アルバート・ホールで指揮者としてデビュー。さらにスティングやロニーウッドなどの音楽家とクラシックの枠を超えてコラボをしたり、ポップスを融合した新たなジャンルのショーを世界中で公演。


聞き手:内田美穂


――今までに何度も来日してコンサート活動をしていますが、日本でのコンサートにおける魅力は何でしょう?


まず言えることは日本はどこに行ってもコンサートホールの設備が整っています。サントリーホールなどの世界的に有名なホールはもちろんですが、地方都市の一般ホールでも音響効果はいいし、デザインもよい。これら高水準のホールが数多くあります。東京だけで70-80のホールがあると理解しています。それから、日本の観客は温かいし礼儀正しい。


――日本の観客はスペインなどに比べて感動しても反応表現が控えめで感情を表に出さないのではないかと想像しますが、実際のところはいかがでしょうか?


そんなことはありません。僕の仕事は僕の奏でる音楽によって観客の心を掴むことですが、日本人でもスペイン人でも感動すれば拍手もすれば声も上げる。日本人もスペイン人と同じぐらい熱狂的な反応を示してくれます。もちろん年配の方々は若者に比べれば飛んだり跳ねたりして感動を表すことは少ないですけれど。


――日本のコロナ規制に対してはどう思われますか?


入国後10日間の隔離期間中は電話にアップロードしたアプリを使って居所をはっきりさせる必要がある上に毎日健康状態を報告するなど厳しく管理されます。隔離中は大変ですが、日本の感染レートは、世界の中でも低く、きっと厳しい水際対策が功を奏しているのでしょう。それでもコンサートホールの席は完売で観客も来てくれます。ほかの国では観客を半分しか入れないなどの規制があるところもありますが、僕にとっては日本式の方がいいと言えるかもしれません。


――日本のヴァイオリニストについてはどう思われますか?


日本のヴァイオリニストは素晴らしい人がたくさんいます。今までに葉加瀬太郎さんや五嶋みどりさんや鷲見恵理子さんと一緒にコラボしました。彼らはレベルが高いヴァイオリニスト達です。


――今回の訪日で一緒にコンサートを開いたフジコ・ヘミング氏について教えてください。


フジコは古くからの友達です。僕がスーパーワールド・オーケストラ世界の著名オーケストラのコンサートマスターだけで組織されたオーケストラ)のコンサートマスターをしている時に彼女が僕たちと一緒にピアノを弾いたことがあり、その時に彼女が僕の演奏を気に入ってその後一緒に英国、スペイン、ドイツ、ポーランドやブルガリア、日本などで一緒に活動しました。フジコはかわいい性格で、ファッションにとても興味を持っていておしゃれな人です。また絵を描くことも好きで僕の肖像画も描いてくれました。彼女が醸し出す特別なオーラにはだれもが魅了されます。だから今でも彼女のピアノを聞きに来る人がたくさんいます。


――ROHのコンサートマスターという仕事に限らずソロイストとしても世界を股にかけ活躍なさっているようお見受けしますが、実際のところはいかがでしょうか?


そもそもコンサートマスターたちはオペラやバレエの中でもいつもソロのパートを弾いています。だから僕もコンサートマスターとしてもソロイストとして演奏しているといえます。そしてROHのコンサートマスターとしては1年のうち3か月ほど従事しています。その他は世界中を飛び回って音楽活動していますが、その中には、クラシック音楽とは全く異なったジャンル、例えば、ポップスやタンゴ、フラメンコ、また映画音楽などの音楽を融合したコンサート活動もします。時には「いい日旅立ち」のような日本の曲を弾くこともあります。ブルガリアでは15,000人の観客を前にコンサートをしたこともあります。また指揮もすればチェンバー音楽も弾くし、教師としても働いています。僕は色々なことに挑戦するのが好きです。昔の音楽家は一つの職業に限らず色々なことをしていた。例えば作曲もすれば指揮もしたわけでそれと同じようなものではないでしょうか。日本ツアーの後はスペインでコンサートをする予定です。


  ヴァッシレフ氏はその瞳が大変魅力的だ。ジョークを飛ばす時はいたずらっ子のようにキラッと輝いた思えば、時には瞳の奥に深い湖を湛えたような静かで優しい眼差しを注いだりもする。彼のまなざしと同様、多様で意外性に富んだ彼の活動にこれからも注目したい。



・ヴァスコ・ヴァッシレフ 最新コンサート情報は公式サイト参照


・ロイヤル・オペラ・ハウス 最新情報は公式サイト参照 



英国ロイヤル・オペラ・ハウス ©Hristo Rusev

ブルガリアでのコンサート ©Hristo Rusev


2021年12月7日付 J News UK にて掲載

https://www.j-news-uk.com/

















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