• Miho Uchida

イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)の世界初ドライブイン・オペラ


アレクサンドラ・パレス ©Alexandra Palace

コロナウィルス感染拡大に伴い世界中のオペラハウスが閉鎖している中、ENOはソーシャルディスタンスを保ちながら生のオペラを鑑賞できるドライブイン・オペラを9月に実施する。ドライブイン・シネマは昔からアメリカの若者には人気があるし、映画館が閉鎖中のドイツでも人気急上昇だったというニュースも聞こえてきたが、ドライブイン・オペラは世界初の試みだ。


もともとENOはオペラ愛好家の裾野を広げるべく新しいオペラの形を探索していたが、今回のオペラハウス閉鎖を余儀なくされる事態に陥ったことで、アイディアの捻出から企画構想まで一気に話が進んでまとまったということだ。場所はロンドン北部にある広大な敷地を持つイベント会場・アレクサンドラ・パレスの駐車場を使う。そこに屋根付きのステージを組み立て、歌手や楽器奏者たちはソーシャルディスタンスの規定を守りながらマイクを使って演じるそうだ。ワイヤレスのサウンドシステムに加えて、舞台の横に大きなスクリーンが設置されるので後方に位置する車からもよく見える。舞台には屋根がついているので雨天決行する予定だ。


上演日は9月19日から27日までの9日間。昼間の公演が8回、夜の公演が8回、計16回というスケジュール。演目は人気オペラとして名高いプッチーニの『ラ・ボエーム』。現代風にアレンジされた90分の短いヴァージョンで、キャストには錚々たるメンバーが揃った。ミミ役にはナタリヤ・ロマニウとシネアド・キャンベル-ウォレス。その日の公演によって交互にミミ役を演じる。ナタリヤは2018年にジョナサン・ミラー演出の『ラ・ボエーム』でENOデビュー、及びミミ役デビューを果たし絶賛された。それだけでなく、ロックダウン寸前までENOで上演されていたアンソニー・ミンゲラ演出の『蝶々夫人』でタイトルロールを演じた際も、昨年のガーシングトン・オペラにおける『売られた花嫁』のマレンカ役でも、またENOの『切り裂きジャック:ホワイトチャペルの女たち』のメアリー役の時も彼女の演技力と歌唱力にはいつも感嘆してきたので今回も楽しみだ。またロドルフォ役はデイヴィッド・バット・フィリップとデイヴィッド・ジャンフーン・キムが演じる。デイヴィッド・バット・フィリップはロイヤル・オペラ・ハウスを含む世界中の有名オペラハウスで活躍するテノール歌手だし、デイヴィッド・ジャンフーン・キムも最近の活躍は目覚ましいので楽しみだ。キムはやはりロックダウン直前にENOの『ルイザ・ミラー』でルイザが愛する恋人、ロドルフォを演じた韓国の新進スターだ。更には画家のマルチェッロ役としてスター、ロデリック・ウィリアムズが登場する予定だ。考えただけでも今からワクワクする。


チケットは車一台につき一枚必要で、各車4人まで乗車可能だ。値段は一台につき103.75ポンド(手数料2.25ポンド込み)。更に、自動車だけでなく自転車での入場も可能。チケットは38.75ポンド(手数料2.25ポンド込み)。自転車席はステージにより近く、良く見える席になる予定だそう。その上、車も自転車も所有していない人でも心配はいらない。そういう観客には舞台近くに設置されたUber Box席と名付けられた動かない車が用意されている。Uber Boxに使われる車は公演と公演の間に徹底した掃除と除菌が行われるので安心して乗車できるそうだ。残念ながらオートバイでの入場は不可。当日券はないのでチケットはオンラインで必ず予約してから行くように。チケット予約は下記参照。


毛布や枕を持って行って、車内を自分たちだけの快適な場所にセットアップすることをお勧めする。劇場ではできないことだ。エンジンを止めないといけないので夜になると寒いかもしれないことを考えたらなおさらだ。なお、字幕がないので来場の際は『ラ・ボエーム』のあらすじの予習をしてから行こう。


チケットの予約はこちらから。https://eno.org/whats-on/eno-drive-live/?action=book

イングリッシュ・ナショナル・オペラの本拠地、「ロンドン・コロシアム」のオーディトリアム © Courtesy of ENO

主役のミミを演じるナタリヤ・ロマニウ。写真は2018年に同役でロールデビュー、そしてENOデビューを果たした時 ©Robert Workman

イングリッシュ・ナショナル・オペラの本拠地、「ロンドン・コロシアム」の外観 ©Grant Smith

2020年7月28日付J News UK(www.j-news-uk.com)にて掲載


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